国際協力という軸の中でも型にはまらず、様々な場所を渡り歩き活躍されている田才諒哉さん。本章では読者の皆さんとともに改めて国際協力とはなにか、なにができるのかを考えていきたい。
10年後の国際協力のカタチ ー 「国際協力というコトバが使われない未来」
ーー10年後の国際協力のカタチはどうなっていると思いますか。
「国際協力というコトバが使われなくなっていくと思います。」
「20年前は国際協力という仕事に就職することは考えられませんでしたが、そこから時間が経ち国際協力という言葉が徐々に浸透してきました。例えばソーシャルビジネスなどの様々な就職の形が出てきて、民間でも国際協力できる時代になってきたと思います。」
「それがさらにもう少し先に行くと、理想論かもしれないですが、もはや国際協力という言葉を使わなくてもすべての企業やNGO、国連、政府などの色んなセクターが、自然といわゆる途上国と呼ばれる国々の支援をしていたり、仕組みのなかで既にそういう取り組みになっていたりとか、そういうカタチに向かっていってほしいという願望も込もっています。」
国際協力サロンについて ー サードプレイスのような場所を目指して
10年後の国際協力について、もはやこの言葉が必要なくなるほど当たり前になるだろうと話す田才さん。そんな未来への一歩、田才さんご自身が代表を務めるコミュニティ「国際協力サロン」ついてお話を伺った。
ーー国際協力サロンのホームページにある「緩やかな革命」に込められた意味はなんですか。
「ウクライナ危機のようなものがあれば大きく世界は動くかもしれないですが、そういった大きな戦争などが起きない限り、日々課題に対して考えたり仲間を増やしていったり、日々の積み重ねが特に社会課題の解決のためには大事だと思っています。」
「緩やかに国際協力に関心を持ってくれる人を増やしたり、それに対してアクションが取れる人がより知識を付け、経験を持ったり。少しずつ着実に積み重ねながら最終的には大きな変化が起こせていけるっていうようなコミュニティに出来たらなという思いで『緩やかな革命』という言葉を使っております。」
「2018年の10月に立ちあげて3年半ぐらいが経ったのですが、参加しているメンバーの方の紹介もあり自然と170人くらいのコミュニティになりました。緩やかにでも変化を起こせるような種を少しづつでも蒔けるような、そういうコミュニティであればいいと思います。」
ーー外国の大きいドナーやJICAではなく国際協力サロンだからこそできることはなんでしょう。
「国際協力サロンはサードプレイスとして存在しているので、一個人として自分の所属先を一回取っ払って立場も関係なく『自分が国際協力についてこう考えるよ』といった意見交換ができる場です。」
「表では言えないような意見も普通にみんなで議論するのは非常に面白いです。ただ国際協力の従事者に対して何かできているかのいうと、国際協力サロン自体はネットワークコミュニティなのでそういったことは現状では何も出来ていないのです。いつかそういうことも出来たらいいなとかは描きつつ、やれることをやっていこうかなと思っています。」
わたしたちにできること
国際協力という言葉に高いハードルを感じ動き出せない、また何をすればいいのかわからないという方もいるだろう。私もその一人だ。日々国際協力と向き合いながら活動をされている田才さんに、そんな私達にも取り組みやすい方法を伺った。
ーー国際協力に興味を持ち始めたときに、まず踏み出せる第一歩はありますか。
「大学生だと国際協力のNGOやJICAなどでインターンをできると思うので、実際に短い期間でも何か関わってみるのはいいのかなと思います。あとはSNSで発信するとかいろいろできるところはあると思います。」
「でも僕はやっぱり、一番ちゃんと国際協力に貢献もできる方法は、わかりやすくお金だと思っているので、自分が興味があるとか、この団体の活動すごくいいなって思うところに寄付をすることをおすすめします。金額は問わずで1000円でも2000円でも3000円でも自分ができる分だけを寄付するのが初めに踏み出しやすい一歩なのかなと思います。」
「支援援助ってそんなに素人が簡単にできることではないと思うので、もちろん何もできないということはないと思うんですけど。より支援の効率や効果を高めるためにも、プロフェッショナルな人たちに託していくのも一つの手なのではないでしょうか。」
ーー何カ国も訪れて活動を行っている田才さんが考える現地を訪れることの意義はなんでしょう。
「コロナもあってなかなか国際協力をやりたくても現地に行けない状況に直面してる人は多いと思います。けど現地に行ったらいいという意見はずっと変わらないです。」
「学生時代にザンビア人で9人くらい子どもがいる典型的なちょっと貧しい農家の家庭の隣で24時間生活して感じたことって何にも変えられないなって思っていて。その経験は今でもフラッシュバックします。」
「コロナ禍ですがなるべく現場に行って同じ飯を食べ、45度の気温の中でアチいアチい言いながら調査をして。どんな作物を食べていて、何に困っているのか、一緒に見て感じるといった経験をオンラインで体験するのは難しいと思います。やっぱり行くからこそ解像度高く現場の課題とか何で悩んでいるか見えてくると思うので、行きにくい時代にはなってしまったんですけど、最低限のリスク管理をした上で、行くことをおすすめしたいなと思います。」
田才さんにとっての国際協力 ー 「できるときにできることをできるだけやる」
何気ないきっかけから、10年間にわたり国際協力の分野に携わってきた田才さん。そんな田才さんが考える国際協力に迫る。
ーー田才さんにとって国際協力とはどのようなものでしょうか。
「そうですね、『できるときにできることをできるだけやる』ことだと思っています。それは国際という枠じゃなくて国内でも同じことがいえると思うんですけど。仮に、国際協力に支援する/援助する/助けるという要素があるとすると自分に余裕がないとできないことだと思います。自分の生活の基礎があって安定した収入もあって、自分の回りの家族が健康であって、そういうような条件でようやく初めてできるので。自分が無理してやるみたいなものではなくて、あくまでも自分ができるときにやる、その中でもさらに、できることをやる。」
「自分自身のそれぞれの得意分野があると思うので、それをできる分だけやるというところ。それがたまたまアフリカ・アジア・中南米の人が対象になっているだけで、別に自分のサークルの友達が困っていたら『できるときにできることをできるだけやる』ってことも、国際協力と同じことです。そういう精神のことを国際協力と呼べるのかなと思います。」
「社会自体がそもそも変化していく中で、その想像って絶対10年後超えてきちゃいます。常に変化していく社会の状況の中で少しでもいい状況に近づけるように、自分自身の使える分野で、自分のできることをやるということは常に考えています。10年後、20年後こうしてようとかはなく、今できるベストを探していこうみたいな。」
田才さんが国際協力の道を進むことになった最初のきっかけは大学時代の友人の誘い。そこからは田才さんの努力と人とのつながり、様々な縁が結びついて現在に至る。今後も続いていくであろう田才さんの活動は、どのように国際協力のフィールドにインパクトを与えていくのだろうか。
以上三章に渡る連載が読者の皆さんにとって、自分の得意なことやできることを見つめ直し、国際協力に限らず挑戦したい何かに一歩踏み出す後押しになれば幸いだ。「できるときにできることをできるだけやる」、自分なりの向き合い方に出会えますように。
【インタビュイー:田才諒哉さん】
1992年生まれ。青年海外協力隊、民間企業、国連など様々な舞台で国際協力に携わる。2018年には国際協力に関心のある人々が繋がるコミュニティ、国際協力サロンを創設。現在はNGOササカワ・アフリカ財団でアフリカの農業支援に関わっている。
国際協力サロンHP:https://kk-salon.com
ササカワ・アフリカ財団HP:https://www.saa-safe.org/jpn/
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